ぶどうの音色、ワインの調べ 第28話

2021 年 02 月 22 日ライター:Yasuyuki Ukita

第28話 イタリア、エミリア=ロマーニャの“逆転人生”❺

〈カステッロ・ディ・ルッツァーノ〉のオーナー、ジョヴァネッラ・フガッツァさんにグットゥルニオについて語ってもらいました。

「グットゥルニオは、とても古くからピアチェンツァ周辺で飲まれてきた赤ワインのスタイルで、常に高く評価されてきました。若いグットゥルニオは飲み心地がよく、熟成したそれは飲み応えがあります。1947年にはイタリアワインの中でも一級のワインと見なされ、国内最初のDOC(統制原産地呼称ワイン)の認定を受けました」

エステートの土壌サンプルを見せるジョヴァネッラさん。

前回述べたように、グットゥルニオはバルベーラとクロアチーナという2つのブドウのブレンドです。伝統的なブレンド比率はバルベーラ60%、クロアチーナ40%であるとジョヴァネッラさんは言います。ボナルダとも呼ばれるクロアチーナ(ジョヴァネッラさんは「ボナルダ」と呼んでいた)はマイナーな品種ですが、バルベーラの方はピエモンテで造られる酸の高い赤ワインでよく知られている品種です。
「バルベーラにはしっかりとしたボディと高いアルコールがあります。そして、なんと言っても最大の特徴は酸が高いことです。一方、ボナルダは色素とタンニンが豊富で、非常に強い香りを持っています。2つのブドウをブレンドすることでそれぞれの持ち味を出し合い、互いの短所をカバーし合うのです。そうしてできるのがグットゥルニオです。私の〈カステッロ・ディ・ルッツァーノ〉では、自社畑のブドウのみを使用しています。ブドウ木の樹齢は平均30年ほど。質量ともに充実した樹齢です。長期熟成タイプの「ロメオ・リゼルヴァ」では、熟成に必要な酸を重視して、バルベーラのブレンド比率を65〜70%にしています」

右のボトルが「ロメオ」。

〈ルッツァーノ〉は、地域で初めてグットゥルニオの熟成にバリック(フランスで熟成に用いられることが多い、オークの小樽)を用いた生産者であるとジョヴァネッラさん。伝統に胡座を描くことなく、良いものは受け入れていく姿勢が見て取れます。

日本人スタッフの槇島あつ子さん。

料理とのペアリングについても訊いてみましょう。 「若いグットゥルニオは、シャルキュトリーや若いチーズ、トマトを使ったパスタ、生の赤身の肉、魚のグリルなどと合います。リゼルヴァは赤身の肉の煮込み、狩猟肉、熟成チーズ、スパイシーなチーズがよく合うでしょう」

ズッキーニのサラダ。

フィノッキオにはパルミッジャーノ・レッジャーノをかけて。

カボチャのグリル。

取材の最後に、ワインに合わせて郷土料理の夕食をご馳走になりました。料理を作ってくれたのは、ジョヴァネッラさんの身の回りの世話をしているロレッラさん。ズッキーニのサラダに始まり、フィノッキオ(ういきょう)やカボチャのグリル、グットゥルニオを贅沢に使ったリゾット、そして仔牛のソテー。

色合いも美しいワインリゾット。

仔牛のデリケートな風味がワインとマッチする。

それはワインが農産物であるという自明のことを改めて思い知らされるような素晴らしい体験でした。同じ地面に生えたもの、それらを食べて育ったもの、同じ空気と水を共有したもの同士の相性が良くないはずがありません。白ワインも出てきましたが、やはりグットゥルニオの懐の深さには唸りました。どちらかの品種単体だけで造ったワインでは、同じ経験はできなかったでしょう。グットゥルニオの「黄金比率」によるブレンドこそは、地味を表す最上の方法なのだと理解しました。

(つづく)

Photographs by Taisuke Yoshida

浮田泰幸(うきたやすゆき)
ワイン・ジャーナリスト、ライター。内外の産地・ワイナリー・生産者を取材し、雑誌やウェブサイトに記事を寄稿している。これまで訪問したワイナリーは600軒を超える。


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